ラベンダーは女王様

みなさん、ハーブと聞いて思い浮かべるものは何ですか?ミントやカモミール、レモングラスなど様々だと思いますが、私は真っ先にラベンダーが思い浮かびました。紫色の可愛らしい小花を咲かせるラベンダー。香りもとてもよく、芳香剤やお香、香水などにも使われています。また、自身で育てているという方も中にはいらっしゃるかもしれません。幅広い層から愛されるこのラベンダー、実は『ハーブの女王様』と呼ばれているのです。今回はなぜそう呼ばれているのか、育て方や効能、利用方法などを紹介していきたいと思います。

ラベンダーにはたくさんの種類がある

ひとえにラベンダーと言っても、大きく分けたら6種類、細かく分けると10種類以上とたくさんの品種があります。それら全てを書いてしまうととんでもない情報量になってしまうので、今回は育てやすさと活用の幅広さの観点から、二種類のラベンダーをピックアップしてご紹介していきたいと思います。

イングリッシュラベンダー

ラベンダーの中でも一番ポピュラーな品種であるイングリッシュラベンダー。名前に『イングリッシュ(イギリスの)』とありますが、原産地はイギリスではありません。地中海沿岸~西アジアが原産地と言われています。また、別名で「コモン(共通の)ラベンダー」や「ファイン(良い)ラベンダー」とあり、数多くあるラベンダーの種でも特に香りが良いとされています。北海道で見られるラベンダーもこの品種で、観賞用の他にもポプリやドライフラワー、香水にも活用できます。マイナス15度まで耐寒性がありますが、日本の高温多湿の夏には弱く、北海道や東北などの寒冷地での栽培に適しています。

フレンチラベンダー

細く伸びた茎の先端に、稲穂状の特徴的な花を咲かせるフレンチラベンダー。このラベンダーの最大の特徴は花穂の先についた葉。私は最初「え、こいつって葉っぱなの⁉」と思いました。葉だけれど緑色ではなく、紫や白い色をしています。細長い花びらにも見えるこの葉は、苞葉と言って花穂を守るために葉っぱが変異したものです。4枚ほどの苞葉が花穂の先端についており、ウサギの耳のようにも見えてとても可愛らしいです。花色も豊富で、紫系、ピンク系、ブルー系、ホワイト系などがあります。香りはやや弱いですが、花が散った後も苞葉が残り、長い期間観賞することが出来るため、ドライフラワーにも向いています。寒さには弱い反面、他のラベンダーに比べて暑さに強く丈夫なため、比較的暖かい地域でも育てることが出来ます。そのため、日本では栽培しやすい品種となっています。

イングリッシュラベンダーとフレンチラベンダーの育て方

上記で記載した2つのラベンダーの育て方を、表にして紹介していきたいと思います。イングリッシュラベンダーとフレンチラベンダーでは育てることが出来る地域が異なるため、自身の住んでいる環境に合わせて選ぶと良いかもしれません。

詳細イングリッシュラベンダーフレンチラベンダー
種まき3月~4月
植え付け3月~5月3月~5月
植え替え3月~5月3月~5月
増やし方3月~5月
剪定5月~6月6月~7月
肥料4月~7月
開花5月~6月5月~7月
収穫5月~6月
挿し木3月~5月
日当たり
置き場所
日光を好むため、日当たり良く
風通しの良い場所で管理
日当たり良く風通しの良い
場所で管理。
梅雨の長雨が当たらない場所で管理するとより長く美しく育てることができるが庭植も
可能
用土水はけのよい土壌を好む。
市販のハーブ専用培養土でも
問題なく育つ
水はけのよい、かつ水もちの
よい土を好む。
市販の草花用培養土でも問題なく育つが、最近ではラベンダー専用の用土も販売されている
水やり乾燥気味を好むため、表土が完全に乾いてから与える庭植の場合は、植え付けから1カ月間は3日おきくらいにたっぷりと水やりをし、それ以降はあまりあげなくて良い。
鉢植えにした場合は、表土が乾いてから根元にたっぷり
水をやる
追肥瘦せ地でもよく育つため過肥の必要なし生育期にのみ追肥。
緩行性の肥料、もしくは液体肥料を薄めたものを月に一度程度与える
病害虫風通しの悪い環境だとうどんこ病にかかりやすくなるため、
発見次第殺菌する。
春先にはアブラムシにも
気を付ける
病気はほとんどないが、防ぎようのない害虫が付着することがある。春や高温多湿時に発生するため、よく見て発見次第
駆除する

最初に記載したように、ラベンダーはハーブの女王様と呼ばれています。なぜ、そのように言われているのか。それは、育てやすさとラベンダーの効能にあります。

ラベンダーは種類が多いため、自分の住んでいる環境に合わせて育てられます。また、育てやすさに定評があり園芸初心者の方でも育てることができます。

効能としては

  • リフレッシュ効果
  • リラックス効果
  • 筋肉痛や片頭痛、月経痛など痛みの緩和
  • 皮膚トラブル
  • 自律神経調節
  • 切り傷や火傷などに効き、皮膚細胞の活性化を助ける

この他にもたくさんの効能があり、ハーブ界での万能薬のような役割をしています。ラベンダーの精油を一滴垂らしたハンカチを枕元に置いて寝るとリラックスできるため、不眠にも効果があると言われています。自律神経の調節を助けてくれるため疲労回復することができ、良い意味で『いつも通りの自分』を取り戻すことができます。このように、ラベンダーには様々な効能があることから『ハーブの女王様』と呼ばれているのです。

ラベンダーの禁忌事項

さて、今までラベンダーの良い部分を取り上げてきましたが、ハーブの女王様と謳われるほどのものならリスクは無いのかと聞かれたらそういうわけではなく、禁忌事項もいくつか存在します。

  • 低血圧の方は使用量に注意する
  • 妊娠初期は使用を避ける
  • 乳幼児や授乳中の女性は使用できない
  • てんかんの方は使用できない
  • うつ状態の方は使用を控える

妊娠初期の方の使用は避けると記載しましたが、鎮痛作用と陣痛促進作用があるため、妊娠後期や臨月(妊娠39週~40週)の方は少量の使用(香りを楽しむ程度)ならば可能です。安産になるとも言われており、分娩室に向かうお母様にラベンダーのサシェ(香り袋)をプレゼントされる方もいらっしゃいます。

また、利用方法によって使用量は変わりますが絶対に目安となる分量を守ってください。

利用方法

ラベンダーには利用方法が多くありますが、その中でも3つほどをピックアップしてご紹介させてください。

まず、ラベンダーの花穂はフレッシュでもドライでもハーブティーに使用することができます。ラベンダーティーはリラックスティーの代名詞と言われています。フレッシュラベンダー大さじ二杯(ドライラベンダーなら大さじ一杯)に熱湯を注ぎます。二分ほど蒸らし、インクブルーの色と香りが出たら飲み頃です。香りや味が苦手でしたら、蜂蜜や砂糖などの甘味を加えてみたり、紅茶とブレンドしてみるのもおすすめです。

自分へのご褒美に、ラベンダーワインはいかがでしょうか。フレッシュラベンダーの葉を取り、茎も短く切ります。軽く洗ってキッチンペーパーで水分を取り、白ワインから花穂が出ないように漬け込みます。2~3日してラベンダーの色が抜けたら完成です。完成したら、花穂はワインから取り出してください。欧州ではナイトキャップ(寝酒)にも使用されるラベンダーワインは、リラックスしてよく眠れます。お休み前や頑張った自分へのご褒美にいかがでしょうか。

ラベンダーの香りをお守りにすることもできます。ラベンダーバンドルズという、南フランスのプロヴァンス地方が発祥の伝統工芸品です。フレッシュラベンダーを束ね、リボンを織り込んでスティック状にしたもので、茎とリボンでラベンダーの花を閉じ込めているのでぽろぽろと花が落ちることがなく、香りを長い間楽しむことができます。作り方は、自分の好みのリボンと11本のラベンダーを用意します。リボンを巻き付く過程で、偶数だと目の数が合わなくなるので、本数は奇数にすることがポイントです。茎から葉をすべて取り除き、長さをそろえたラベンダーの花穂の根元を糸で固めに結びます。この際、ラベンダーをひねってしまわないようによく注意してください。次に花穂を下に向け、先ほど結んだ位置を爪で押さえながら、茎が折れないように注意しながら均等に斜線になるようにそっと折り返していきます。そして、折り返した茎の位置にリボンを絡め、茎に交互にリボンを通していきます。リボンの端を両面テープでとめると作業がしやすいです。奇数本で仕上げるので、上段と下段に必ずリボンが上、下に交互になっているはずです。最後は、リボンを自分の好みの形に結んだり可愛く仕上げて完成です。大切な方へのプレゼントに、お部屋のインテリアに、また玄関や車の消臭対策に、ラベンダーバンドルズを手作りしてみてはいかがでしょうか。

このように、フランスの伝統工芸品になるほど古い歴史や優れた効能をもつラベンダー。注意事項はありますが様々な症状に効くため、ハーブ界の万能薬と言ってもよいでしょう。自分で育てて利用することができるのもラベンダーの魅力だと言えます。今回紹介した利用方法以外にもたくさんの小物やケア用品などに使用することが可能です。疲れた時や癒されたい時、大切な方への贈り物や自分へのご褒美に。『ハーブの女王様』ラベンダーの美しい香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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